キノのつらつら日記

好きなこと、日々感じたことを文章 にします。

【読書記録】イニュニック 星野道夫

f:id:kinoinsect:20201225233212j:plain写真家・星野道夫さんがアラスカに家を建ててから数年間の話し。 アラスカの自然と人間と関係について語られている。 星野道夫さんの言葉は本当に美しい。心の深いところにすっと入ってくる、瑞々しく流れるような言葉の数々。 星野道夫さんの本を読んでいると、自分の中にもうひとつの時間が流れ始める。悠然としていて清澄な気持ちにさせてくれ、言葉の力の大きさに気付かされる。

『旅する木』もオススメ。

断想

今日、3歳の次男が突然、胎児の頃のことを話し始めた。

ママのお腹にいるときは、丸くなっていて、暇で、ときどき水の中を泳いでいたと。聴こえる音は、ドクッドクッという音だそうで、なかなか鮮明に覚えいる様子だった。



今夜、帰宅途中の車内で名探偵コナンの主題歌を聴いていた。コナンのアニメは小さいとき良く観ていて、ふと当時の断想が蘇った。いつも夜に放送されるので、楽しい記憶というよりは、一日の終わりを告げる寂しい気持ちやこれから宿題をやらなければいけない、億劫な気持ちが浮かんできた。


当時はどちらかと言うとネガティブな気持ちで主題歌を聴いていたのだろう。

しかし、20年数年後の今は心安らぐ気持ちで聴いていた。

今生きている世界とは違った空間を旅するような、そんな感覚である。

さまざまな人生の岐路に立った時、いつか見た風景に励まされたり勇気を与えられたりすることがきっとあるような気がする。

そのきっかけが音楽だったり匂いだったり、感触だったりするのであろう。

3歳の次男もいつか、またママのお腹の中の記憶が蘇り、それに励まされることがあると嬉しい。


史実に基づいたフィクション

「史実に基づいたフィクション」と説明書きされた本を良く見かける。これが非常にややこしい。

私はフィクションも読むが、圧倒的にノンフィクションが好きだ。

「史実に基づいた」とあるだけで、もの凄く読んでみたくなる。もちろん「史実に基づいたフィクション」とあってもとても興味が湧く。

しかし、どこからどこまでが実話で、どこからが作り話なのか、と読んでいる間にやけに気になってしまうのだ。

今読んでいる『アウシュビッツの図書係』も史実に基づいたフィクションらしい。

夢中で読んでいても、ふと実話と作り話の境界がどこかと気になってしまう。


ただ、「事実」には人を惹きつける何がある気がする。事実を目の前にすると素通りできないのが、人間の性なのではないか。

たんぽぽの種

先日息子と一緒に天白川沿いを歩いていました。

綿のような一本のたんぽぽの種を見つけました。

思わず爪先で種をひと蹴り。子供の頃、たんぽぽの種を見つけては、蹴って種がふわふわと飛ぶのを見ていたのを思い出しました。


森の中で突然匂ってくる腐葉土の匂い、ラジオから流れてきた、昔聴いていた曲、カラカラに乾いたケヤキの枯れ葉を握りしめたときの感触。

日常の中で不意に見る過去の自分との繋がり。小さいけど嬉々たる瞬間である。

これだけでも生きている意味を見出せると思う。

味覚の対比について

蕎麦はワサビと食べると美味しい。お肉は岩塩と食べると美味しい。トマトは塩をかけると美味しい。

これらは全てメインの味を引き立たせるための手法だ。

蕎麦自体には「甘さ」は奥深くに隠れているが、その「甘さ」の対局にいる「辛さ」を加えることで、隠れていた「甘さ」を感じることができる。


世の中全て対比でできていると思うと、嫌なことも乗り越えられる。

辛い仕事のあとには楽しい休日が待っている。仕事のお陰で、休日の楽しさが引き立つ。

風邪を引いて苦しい時も、治るとすごく気持ちが良い。これも然りだ。

「陽」は「陰」なしではあり得ないのだ。

【読書記録】深夜特急2

f:id:kinoinsect:20200530200901j:plain


深夜特急の2作目。沢木耕太郎の紀行記。

深夜特急は、バックパッカーのバイブル的な本だが、舞台が70年代なので自分の体験とはちょっとギャップがある。


しかし単なる旅行記ではなく、哲学的な要素もあり非常に読み応えがあった。


前の客が飲んだコップをたらいの水をくぐららせるだけで洗ったものを使ってジュースを飲むシーンで、 「旅に出て鈍感になっただけなのかもしれないけど、それ以上に、またひとつ自由になれたと言う印象の方が強かった。」と言う記述が印象的だった。

今まで抵抗があったことを受け入れ、自分が一皮むけて、少し楽になる感じかな?と思います。すごくしっくりときた。


本は自分の言葉にならない気持ちを代弁してくれることがあり、素晴らしい‼︎

【読書記録】 消された一家

f:id:kinoinsect:20200527215556j:plain

実際に起きた事件・北九州監禁殺人事件のドキュメンタリーです。

平成に起こった事件ですが、この本でこの事件を初めて知りました。 

内縁の妻を暴力によって、マインドコントロールし、その家族7人を監禁・殺人した事件。

想像の域を超えた、サイコパスの仕業です。

主犯の松永は、自分では手を下さず、判断を下さず、言葉巧みに内縁の妻とその家族を操り、お互いに殺人・証拠隠滅を図りました。


そのやり方はここでは書けないくらい残虐な内容でした。何度も読み始めたのを後悔するほどに。 被害者を恐怖により、思考停止状態にさせ、お互いを憎しみ合わせ、殺人を手伝わせる。遺体の処理までもやらせる。ナチス下のホロコーストと似ている部分があります。

ナチス強制収容所に関する本を読んでも、同じような現象が起きていたことがわかります。

囚人は互いを監視し、少しでも序列を上げるために、規律を違反した仲間を通報しました。時には、遺体の処理も進んで手伝いました。


人は度重なる虐待によって、自分の身を守るため、倫理感をなくし、人の心をなくし、家族までを殺すことがあり得ると言うことです。


松永がなぜこのような犯罪に手を染めたか?その心理は?これはまだ良く分かっていません。

彼は死刑判決を受けましたが、未だに獄中で無罪を主張し続けています。